三軸組織の製織工程

【原材料準備工程】

三軸組織の場合、通常の経糸と緯糸の柄織り物と異なり、斜め:斜め:経ての3方向の組み糸の動きでだけで、柄粋と風合いを表現するため、原材料の質やこだわりが製品の品質と仕上がりに大きな影響を及ぼしますので、大変重要な工程になります。

原材料準備工程 その1

■撚糸(ねんし)

撚糸とは、蚕(かいこ)が糸を吐いたボール状の繭から、髪の毛よりも細い生糸と呼ばれる糸を取り出し数本を撚り合わせる作業工程です。
「三軸組織」で使用する糸は、一般的な西陣織で使用する糸とは異なるため、当社指定の撚糸工場において、独自の別誂えの絹糸に仕上げております。撚糸職人と試行錯誤を繰返し、適度な太さと弾力、伸縮性に優れた撚り回数を導き出して仕上げております。

原材料準備工程 その2

■糸染め

「三軸組織」の特徴である斜め角度のグラデーションや、光の反射角による光沢美を引き出すためには、単色の糸ではなく、何色にも染め分けられた絹糸を組み合わせて綾なしています。三軸組織で使用する色指定は数千色に登ります。
そのため、染色の色指定が細かく色の濃淡も複雑なため、長きに渡り当社指定の染色工場で、高度な染色加工技術を有する熟練職人の手によって染められた糸だけを使用しています。

原材料準備工程 その3

■糸繰り

糸繰り作業も非常にデリケートな指先の仕事で、精神的にも根を要する作業になります。
細かく染められた絹糸を、糸繰り場とよばれる作業場に持ち込み、カセの状態から使い勝手のよい状態にするためにゴコウと呼ばれる糸枠にまきとります。
糸枠に一本ずつ巻きとってゆく単純な作業の繰り返しになりますが、絹糸のような細いものは染の調子によって、糸が切れたり、絡まったり、ヒケが起こりトラブルの原因になるため一瞬たりとも目を放せない根気と細心の注意を要する工程になります。

原材料準備工程 その4

■経尺(へしゃく)

経尺とは、一般的に織るテキスタイルに応じて、束ねる糸の本数・長さ・色等を調整する作業のことを意味します。本数は糸の太さ、長さは出来上がる生地の長さ、色は模様と配色に対応しています。「三軸組織」では、240個の組み糸と、240個の軸糸を作っていきます。
作る糸は、織る生地によって異なりますが、概ね10本以上の糸を色の組み合わせを変えながら、織る生地の長さに合わせて製糸します。10本の糸が均一なテンションでムラなく合わせなければならないため、原材料準備工程の中で最も重要な工程です。

原材料準備工程 その5

■ボビン巻き

経尺(へしゃく)工程で作られた組み糸を、大型環状織機専用に誂えられたボビン巻き機を使用して、480個のボビンに長さとテンションを整えながら巻き付けて行います。
480個全てのボビンに定められた長さの糸を巻き付けなければ、規格通りの長さの製織は出来ないため、スピンドルと呼ばれるテンションを一定に保ちながら組み糸を動かす装置にセットして、慎重に確認しながら仕上げていきます。480個ものボビンに巻き上げるため非常に手間隙の掛る作業工程です。

【製織準備と製織工程】

三軸組織は、当社だけが保有する世界に2台しか現存しない大型環状織機によって製織をいたします。それだけに、特殊な方法や独自な製法をとりながら製織工程までの準備をし、織り上げていきます。

製織準備工程 その1

■製図制作

一般的に西陣織等の織物では、方眼紙に図案の柄を写し取り描いて行きますが、三軸組織は組み糸の動きと重なりで表現するため、絵柄ではなく組み糸の動かし方を方眼紙に書き製図化していきます。
一般的な織物と異なるところは、図案化された絵柄を書き写すのではなく、組み糸の重なりを製図化するため、頭の中で色の重なり具合をイメージしながら書く必要があるため、長年の経験をようする作業になります。写真にあるように方眼紙の升目の1つ1つを、根気よく塗りつぶしていきます。柄にもよりますが、1つの柄パターンに作成する製図の長さは、2メートル以上の長さになる事もあります。非常に根気と集中力が必要な工程になります。

製織準備工程 その2

■紋彫り

制作した製図を基に工場内に設置している専用の道具を使用して、ジャガード装置に製図データを読み込ませるための紋紙を作成していきます。大型環状織機の紋紙は、独自の規格の大きさであるため、紋紙を作る道具、材料となる紙、紋紙を繋ぐ糸までもが特別仕様のものを使用して、1枚1枚手作業で穴を開けていきます。
一般的な織機には、織機1台に対してジャガード装置1台の構成です。しかし、大型環状織機では1台の組み台に対して8台のジャガード装置が設置されています。そのため、1つの柄に8組もの紋紙を作成する必要があり、非常に根気と労力、時間を要する工程です。

製織準備工程 その3

■配列(セッティング)

ボビンのセッティングは、製織前に行う最終の作業です。大型環状織機は、直径約5メートル 高さ約5メートルもの巨大な織機ですので、セッティング作業も大変手間と時間の掛る作業になります。
組糸の玉数240個と軸糸の玉数240個、合わせて480本ものボビンを、製図(紋意匠図)に合わせ大型環状織機に一つ一つポジショニングしていきます。1つの柄パターンを織るために必要なセッティング作業は5時間以上を要し、ほぼ一日仕事となります。

製織工程

■三軸組織の製織作業

様々な原材料準備工程と製織準備工程を経て、漸く「三軸組織」の製織工程に入ります。「三軸組織」は、世界に2台のみとなってしまった大型環状織機で織り上げていきます。
大型環状織機は、特殊な織機であり、製織作業においては非常にデリケートな操作が必要になります。
360度全方向に約200キログラムのテンションを均等に掛けながら、斜め方向に組み糸を動かしながら組み上げていきます。微妙なテンションのズレや傾きが、糸切れや緩み、ヒケの発生につながり不良品の原因になります。
そのため、織りが始まると糸切れや緩み、埃や小さなゴミなどが付着していないかを職人たちは付きっきりで監視、チェックしています。三軸組織は、大型環状織機といわれる織機によって織り上げますが、ベテラン織り職人たちの確かな「手」と「目」と「耳」が入ることによって高い品質が保たれております。
織り上がった三軸組織は、皺になりにくく緩み難いという特徴があり、また組み織物特有の光の反射角による光沢を醸し出します。帯地、服飾テキスタイルの最高級素材として高い市場評価を得ております。

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